第12章 強制終了と執事の見る夢とメリーの嘘
一方的に力任せに縋り付かれていた状態から
いろはがメリーの身体に自分の腕を伸ばすと
あくまでもそっと…壊れ物を
包む様にしてメリーの身体を抱きしめる
『姫…さま…ッ、
私を…ずっと…姫様のお側に…
置いて…居ただきたく…
御座います…ッ。姫様ッ』
そう…メリーが…縋る様に言う…その言葉は
私じゃない…”誰か”に充てられている物で
メリーは自分の執事の筈なのに
彼が…傍に居たいと
仕えたいと思って居る主は…
自分ではない…その誰か…なのだと
その誰なのかも 知らない
自分じゃないその姫様に対して
自分の胸がザワザワとざわついて
落ち着かなくなってしまって居て
どうにも…複雑な気分になってしまって居た
でも… こうして許しを何度も乞う
その姿を見ていると…彼の不安が滲み出ていて
まるでメリーが小さな
幼い子供の様に見えてしまって
その不安を…拭ってあげたいと思ってもいて
「私は…、メリーが…
私の執事で良かったって思ってるからさ。
まぁ、そのちょっとスパルタと言うか、
厳しい感じの言い方とか、して来るけどさ。
ちゃんとメリーがこっちの事…をね、
見ててくれてて、私の
過去の恋愛の失敗との事とかもさ、
色々とね、拗らせちゃってた事とかもね。
それは勿論、体調とかもだけど…。
そいう言うのも…ね、メリーが私を、
ちゃんと見て言ってくれてるって事はね。
ちゃんと…私だって、分かってるつもりだよ?」