第1章 【Naughty Girl】
「じゃあ…さっきの電話は?」
「……お母さんだよ。」
着信履歴を見せながら莉菜が言う。
「てかさ、、母親なら出ろよ笑
出ないとこっちは怪しむじゃん。
余計な心配させんなし。」
「うん、それはごめん。
でも、あの雰囲気はだいぶ出にくかったよ笑」
「……かけ直したら?」
「ううん、大丈夫。
そのあと夕飯要るの? ってきてたから、
ラインしとく。」
「……ふーん? じゃあさ、
夕飯、要らねぇって言っときなよ。」
「うん。」
返信しようと携帯を手に取った私の背中に
ピッタリくっついて左手で私の手首を掴んで
右手で私を後ろからハグするカレ。
「やっぱ、そうじゃなくて…
今日は泊まってくるって言って。」
「でも、」
「でもは、なし。オレ、今までずっと…
待ってたんだよ?
オレだけのものになってくれた記念日くらい
独占させてよ。莉菜のこと。」
紫耀の右腕に力が入る…。
「………っ紫耀、苦し…。」
「ん……ふふっ。じゃあ、好きって言って。
そしたら、解放してあげる。」
「今日…、最初に好きって…言ったよ?」
「……は?笑 あんなふざけ混じりの
好きでいいわけないでしょ?笑
お願い、言って言って!」
そうやって子どもみたいに後ろから
私の頭におでこをグリグリと押し付けてくる。
どっちがふざけ混じりなんだか!笑
って心のなかでツッコんでたら、
私の肩にポテンと頭を預けて
「…ねぇ、お願い。。」
ってキレイすぎる顔で
すがるように子犬のような目をして
見上げてくる罪作りなカレ。
「………好き。」
「んーー?? 聞こえなかった!笑
ねぇ……もう1回。
ちゃんと、オレの名前呼んで言って?」
「……紫耀のことが、好き。」
そう言い終わる前に私の体は
いとも簡単にカレの方を向けられて、
合わさった唇から私たちの体温は
丁寧に混ざり合っていく…。
カレが離れた気配を感じて、うっすらと目を開けると
ほんの数インチほどの位置で、微笑んでいたカレ。
「オレも…、好き。
莉菜のことが大好き。
ずっと、オレだけを見てて……。」
「うん…。」
約束だよ、莉菜。
僕の知らない誰かと下の名前で呼び合わないで。
僕の知らない誰かに僕だけの君をみせないで。