第4章 【片想いの小さな恋】
週が明けて2週間ぶりの勉強会。
久しぶりにノックするドアに緊張が走る。
「…はーい!」
「失礼します。」
「あ、髙橋君! 満点おめでとう!」
「先生のおかげです。ありがとうございます!」
「いやいや、髙橋君が頑張ってたの知ってたから
自分のコトのように嬉しかったよ!
今まではポカミスのせいであと一歩のところで
満点逃してたりしたのに、今回はそれもなかったし。」
先生に褒めてほしくて穴が開くくらい
見直ししたからね…苦笑
でも、そんなことはあまり知られたくないから
「よかったです~。」とだけ笑ってみる。
「テストのやり直しはないし…先週やってもらった
ところで解説読んで理解しにくいところあった?」
「あ、今回は大丈夫でした。」
「うんうん、やっぱり、そうだよね。」
「……え、やっぱりって?」
「最近の髙橋くん見てると、同じように説明しても
ちょっと前とは伝わるスピードが違ってたから。
多分そろそろ解説を読むだけで代数学は
理解できるようになってきてるんじゃないかな
と思ってたんだよね。」
……え、これって、どういうこと?
卒業の方向ってこと…??
ちょっと、想定外の流れに動揺して
何も答えられないでいると
「もう代数学の方は独学でも大丈夫そうだから、
次は幾何学の方に入ろうかなって思ってて…。」
「幾何学…数Bとかじゃない分類で言われると
ちょっと、ピンとこないんですけど…。」
首の皮一枚繋がったような感覚に
ようやく声を音にすることができた。
「確かにそうよね。でも、教科書は代数学も幾何学も
解析学も混在してるから、系統立ててやった方が
理解はスムーズだと思うから教科書の順番どおり
じゃなくなるところもあるけど、いいかな?」
「あ…お任せします。」
「うん。とりあえず、幾何学に入る前に
中学までの平面幾何を復習しておいてほしいから
来週までにこのプリントをやっておいてもらえる?」
先生から渡された3枚のプリントを、斜め読みする。
「あ〜…補助線、苦手です。
補助線のアイディアが少なくて。」
「大丈夫! 殆どの学生がそうだから。
幾何学と…特に解析学はヘビーだけど、
演習量がモノを言うから、ちょっと、頑張るよ!笑
しっかり基礎固めをして積み上げていけば
大丈夫だから!」