第4章 【片想いの小さな恋】
でも、本当に社交辞令でも何でもなく…
先生の言葉に視野が開けた感覚があった。
「今の僕にできることはきっと…ここが僕の
居場所だと信じて。むしろ、ここに自分の居場所を
作るくらいの気持ちで頑張るだけなんですよね。」
「…そうだね、髙橋くんに限らずだけど
居場所はあるものじゃなくて作るものだと思うし、
努力をやめたらあったはずの居場所が
なくなることもあると思うし…。」
先生ってばなかなか怖いことを言うな、、、
とも思ったけれど、肝に銘じておこう…
と襟を正した。
「いまの僕を支えてくれてるのは
間違いなくダンスです。
だから、いまはダンスをガッツリ踊れる曲が
多ければ多いほど、自信を持って
ステージに立てるところがあって…。
子どもの頃、練習に厳しかった父親が怖くみえて
家での練習中に逃げ出したくなったことも
ありましたけど、昔の自分、頑張ってくれてて
ありがとう…! って心底、思ってます。」
「うん、ほんとだね。髙橋君のことを
一番近くでずっと、見守ってくれてるのは
過去の髙橋君だから。
そうやって自分にはこれがある! って自信を持つ
ことができるほどの強みって一番の味方だと思う。」
「だからこそ、将来…ダンスが無くても自信を持って
ステージに立てる自分で居たいな…
という想いもあります。
いつか、そんな僕が
ファンの人の日常の一部になったり
誰かの日々を彩ることができたらなって…。」
「素敵な夢だね…。うん、そんな未来の髙橋君に
テレビ越しに逢えるの、楽しみにしてるから!」
オレはヘラっと笑ってみせながら、
『そんな悲しいこと言わずに
オレの隣で、オレのことだけを推してよ…』
なんて、口に出せるはずもないことを希う。
この片想いを守りたいと願ったのは自分なのに
どこかで気付いてほしいと祈ってしまうなんて。
こんな心の揺らぎなんて麻生先生は
きっと、想像すらしてないんだろうな…。
自分勝手なやるせなさに目眩がした。