第4章 【片想いの小さな恋】
「同じシリーズは使ってたよ。青チャート。」
……なんだ、お揃いじゃなかったんだ…。
その事実にこっちはちょっとだけ落ち込んでるのに
先生はそんなこと全く意に介していない素振りで
説明を続けていく。
「そんなに特別なコトじゃないんだけど…
とりあえず、私がやってたやり方を教えるね?」
「はい! お願いします。」
***
「…こんな感じで進めていって、
解答を読んでも分かりにくかった問題のページには
付箋をつけておいてね。
補習のときに一緒に
やり直しノートにやるから。」
「…はい、わかりました。」
「とりあえずこの方法を試してみて
髙橋君が自分に合う勉強方法を見つけるお手伝いを
していくってことで…いいかな?」
「はい、よろしくお願いします!」
その後も
口元を隠したり顎に手をやったかと思えば
目をつぶったり泳がせたりする髙橋くんを
そのままにしておけなくて、声をかける。
「……何か気になることがあるなら
遠慮なく言ってね?」
「え、いや、大丈夫です…!
あ、でも…何でですか?
ボク、挙動不審でした…?苦笑」
「そういうんじゃないけど、、、なんとなくね。
もし、気になることがあるなら
遠慮しないで言ってくれた方が嬉しいからね?」
先生って……サッパリしてるくせに
こういうところ…
なんだか、ズルいなって思った。
「……ありがとうございます。」
「あ、変なこと言ったら通知表に関係あるかな…とか
余計なことは全然考えないでいいから!笑
数学はもちろんだけど、せっかく髙橋君が忙しいなか
捻出してくれてるこの時間で、髙橋君の心が
少しでも軽くなってくれたら嬉しいし。」
そう言って胸をすくような笑顔を向けてくれる
麻生先生に惹かれる理由なんて…
最初から
オレには必要なかったのかもしれない。
そう…、思えた。
今まで教壇に立つ先生しか知らなかったし、
知ろうとしてなかったけど…。
もっと、
先生のことを知り尽くしたいと思った。
「……全然、本当に全然
大したことじゃないんですけど…。」
「うん。…ていうかね、ここで私と話すときは
そういうのも気にしないでくれると嬉しいかも。
これ以上頑張りすぎないでいいから…ね?」
「……え?」