第4章 【片想いの小さな恋】
コンコンッ!
約束の時間になったので数学研究室に向かって
ドアをノックする。
「はーーい!」
「……失礼します。」
「待たせちゃってごめんね!
今週は急だったから調整できなかったけど、
来週からは時間調整するから、16:30からしよ!」
「…え、僕のために…いいんですか?」
「いい、いい! できる限り協力するって
言ったでしょ?」
「ありがとうございます。
でも、なんか…すいません。」
「気にしないで!笑
私が、そうしたくて勝手にするだけだから。
髙橋君、そういえば…
お弁当も朝から自分で作ってるって
職員室の噂なんだけど、それって…本当?笑」
「あ、本当です。」
からかうような目つきで聞かれたので
少しだけムッとして答える。
「え…本当だったんだ。ちょっと…凄すぎない?
ごめんね、
デマだったときの反応しか準備してなかった笑」
「笑。いやでも、特別なことをしてる感覚はなくて。
昔から料理はしてたので、自然な流れというか…」
それなのに、明るく返されるもんだから
つられて笑っちゃうし、なんか、調子狂う―――…。
「そんな自然な流れ、なかなかないから!笑
私なんて1人暮らしするまで全任せというか…苦笑」
「…そうだったんですか?笑」
「ひどい娘よねぇ…苦笑 今思えばだけど。
でも一人暮らしするまではホント甘えっぱなしで。
だからこそ、同居してるときから親孝行できてる
髙橋君すごいなぁって。」
「え、えぇ~…苦笑」
褒められたことが素直に嬉しかったし
もう少しだけ昔の先生のことを知りたかったけど、
変なお茶の濁し方しかできなくて。
「だから頑張り屋の髙橋君のことは
人として尊敬してます。」
「いやいや…僕より努力してる人たくさんいるんで、
自分なんてまだまだですけど…苦笑」
「…そっか。年下なのにしっかりしてるなって
思ってたけど、それはそうよね?
髙橋くんはいつからお仕事してるんだっけ?」
「中2からなんで、3年目です。」
そう答えると先生は子どものように目を丸くして
パチンと手を叩いて続けた。
「やっぱりそっか! 髙橋くん、先輩だ。
私社会人2年目だから…。」
「…苦笑 あ、そういえば…
先生って僕のことを前にも頑張り屋って
言ってくれてたんですけど、何でなんですか?」