第4章 【片想いの小さな恋】
…テスト前だって言うのに
さっきの麻生先生の言葉が
喉に刺さった小骨のように気になって、
気になって、仕方がなくて…
全然授業に身が入らない。。。
くそ、優斗のヤツ、余計な質問しやがって…
心の中でそんな八つ当たりをしては、
髪の毛をぐしゃぐしゃとかき混ぜて
机に突っ伏する。
「髙橋君! 髙橋海人くーん、聞いてる?笑」
「…聞いてます。」
「ホントに?」
「……聞いてませんでした。」
「よね?苦笑 いまは、3時間目で数学です!
机の上にあるのは国語でしょ。」
「…すいません。」
「頑張り屋さんの髙橋君がめずらしいね?
とりあえず国語しまって、数学出して!」
なんだろう…
注意されて嫌だったとかそんなんじゃなくて。
“頑張り屋さん”って思われていたことが
素直に、嬉しかった。
その先生の期待を裏切らないようにしたくて、
いつも以上に真剣に取り組んで
テストに臨んでみることにした。
***
もともと数学は得意だったし頑張った甲斐もあって、
解いた感触も良好だったオレ。
「今から返却します。出席番号順に並んでー!」
出席番号順に並ぶと嫌でも前後になる優斗と
じゃれ合いながら返却を心待ちにする。
自分の順番がきたタイミングで軽く微笑まれたオレは
胸中穏やかではいられなくて、目を逸らしながら
答案をガサッと受け取って、急いで席に着いた。
「今回の平均点は61点。学年トップは98点。
このクラスのトップは93点で髙橋海人君!」
クラスメートからまばらな拍手が送られているけど
オレはそんな拍手よりなにより…
「お仕事もしながらよく頑張ったね!
トップ10の中にトレイトの生徒が入るのは
珍しいから、私も鼻が高かったです笑」
「結局先生の手柄かよ―笑」
「違います笑 髙橋君の手柄です! ね?」
オレだけに向けられたその笑顔が
周りの目も気にならないくらい嬉しかった。
オレの好きなタイプはほんわかしてる子だし
キレイ系よりかわいい系。
先生はオレのタイプじゃない…ハズ。
それなのに…。
さっきの麻生先生の言葉によって
まさか、こんなに動揺させられるなんて…
困る。
オレには恋をしてる余裕なんて
これっぽっちもないのに―――…。