第3章 【生活(仮)】
そんなことを考えて悶々としとったら
1時間程たってから莉菜が
ベッドに入ってくる気配がした。
だけど、
まだ冷静になれてなかったオレは
壁側を向いたまま眠ったふりをする。
ときおり、
莉菜の咳払いが聞こえる。
多分、まだ起きとるよな…。
とは思うけど、
お互いにそれを覚られたくないオレらは
一生懸命に寝たふりを取り繕う。
いつもは気にならん時計の秒針が
狂おしいほど静けさを囁いてくる。
こんなに近くにおるのに、
向き合えんくて。
余計に遠く感じるのは
きっと、
莉菜を好きやから…。
莉菜?
ごめんな。
大人になれんくて……。
***
「……おはよ!」
カーテンを開けながら莉菜が
朝に弱いオレを優しく起こす。
「………はよ。」
「朝ごはん、できてるよ。食べる?」
莉菜がベッドに腰かけながら
オレに声をかける。
「…んーん、いまはいらん。」
「……まだ寝とく?」
「んーー…できれば、ギリギリまで。
何時には出んとヤバい?」
「ギリギリだったら10:30…かな。」
「……ん、りょ。」
了解、とばかりに廉が腕を少しだけ上げたので、
立ち上がろうとするとその手は
ベッドに置いていた私の左手の上に下ろされた。
「…………ごめんな。」
って貴方が小さく呟く。
「……うん。」
どんなにケンカした次の日も莉菜は…
フラットに接して謝りやすい雰囲気を作ってくれる。
謝ったらそれ以上絶対にオレを追い詰めんくて。
それがわかっとるからオレも安心して謝れる。
結局、オレは莉菜の手のひらの上なんやけど
それも悪くない……。
てか、むしろオレにはそれが居心地よくて。
「私、今日仕事あるからそろそろ出るけど…
大丈夫? ちゃんと起きられる?笑」
「……んー…無理…ぽぃ。」
「じゃあ、廉の携帯でアラームかけとこっか?」
「んー…やっぱ、…いま起きる。」
もぞもぞと起き上がって
私の腰に腕を巻きつける。
「ん〜……」なんて甘えたような気だるい声を
もらしながらシャツの裾から
するすると廉の手が登ってきて…。