第3章 【生活(仮)】
「謝られるとかえってムカつくんやけど笑」
そうやって笑う
目の奥が笑ってない廉は
私の苦手な廉だ…。
さっきまで幸せな気持ちでいっぱいだったのに、
痛いくらいの沈黙が2人を支配している。
私に抱きついていた腕を緩め、
私の隣に座り直すカレ。
「別に…莉菜の美容師が男でもええやん。
女の美容師さんに切ってもらってって
莉菜に頼んだこともないんやし。
ええねんけど…。」
「……うん。」
「…いつからその人に切ってもらってんの?」
「えっと…
いつからだったかな……。」
「覚えてないくらい前からってこと?
オレより長い付き合いなん?!」
「ごめん、違う違う! そうじゃなくて…!
勘違いさせてごめんね。
全然意識してなかったから、
ちょっと、あやふやっていうか…。
でも、多分
廉と出逢った後だったと思う。」
「……そうなんや。でも…
答えてくれたのにほんま、ごめんな?
前やったって聞いてももちろん嫌やけど、
後やったって聞いてもオレと付き合うてんのに、
わざわざ新しく男に切ってもらう必要あるん?
ってなっとるわ、オレ…。」
「……廉。」
「ごめん。オレ…、何言うてるんやろ。苦笑
いまのオレ、むっちゃダルいやん…。
先ベッド入って頭冷やしとくわ。」
そんな廉にかける言葉が見つからなくて
寝室に向かうカレの背中を
ただ、見つめていた私。
今まではどれだけ疲れてても、
週末のお泊まりで2人一緒に寝室に向かえただけで
疲れを感じないくらい幸せだったのに…。
今はその寝室が
遠くに感じる―――…。
***
なんで…
オレはいつもこうなるんやろ。
オレはただ、
莉菜を好きなだけやし、
いつも
笑顔でおってほしいだけやねんけど…。
たった、それだけのことが
なんか、
うまく……できん。
莉菜の笑顔が好きなのに
その笑顔を奪っとる自分に呆れるわ…。
つまらんヤキモチ妬かんかったら
今日もキミのおやすみの声を
聞けとったハズやのに。
今頃キミを腕の中に抱いて
寄り添って眠れとったハズやのに…。
ほんま…
どうしょうもないアホやな、オレは…。
彼氏失格やわ…。苦笑