第2章 【幸せがよく似合うひと】
「神くんと同じのをお願いします。」
とやっとの思いで声にする。
「ん。了解ー。」
そう言いながら呼び出しボタンを鳴らして
メニューを受け取る神くんを見て、
なんだか、慣れてるなって思った。
彼氏のいたことがない私は
そもそも親以外と外食することに慣れてなくて。
それでなくても、さっきのことがあって
私は落ち着かないのに。
いつもどおりのスマートな態度で
店員さんに注文している神くんを見てると
私だけ感情かき回されてるみたいで
なんか、ちょっと、悔しい……。
「はぁ~! 涼しい~!
9月とはいえまだ暑いもんねーマジ天国!
なんか、やっとゆっくりできるね!
大丈夫? 足とか、痛くなんなかった?」
「うん、ありがとう。大丈夫だよ!
神くんが、私に歩くスピード合わせてくれてたから。」
「よかったぁ。あ、俺さ、麻生さんの
そういうところいいなってずっと、思ってたの。」
「えっ。どうしたの、急に。笑」
「さっき告白したんだから別に急でもないでしょ笑」
「あ、うん、そだね。。」
やっと、平静を取り戻しかけて
普通に喋れそうだったのに、
また、逆戻り。
さっきのドキドキにまた支配されて
鏡を見なくても顔が火照ってるのがわかる。
「いや、なんか前から好きだったって
言われたトコロで、急には信じられないだろうな
って思ったので、具体例を挙げてみました笑」
「説明文的文章構成なの面白いね笑
でも、そういうとこ…って?」
「笑。うーん、なんていうか。してもらってることに
ちゃんと感謝できるところっていうか…。
乗り換え駅まで迎えに行ったことにしろ、
下調べしておいたことにしろ、
歩幅を気にしてたことにしろ麻生さんは
それを当たり前だと思わないじゃない?
勿論、そういうのは男がすべきだと思ってるから
するのは嫌じゃないよ?
けど、それを当たり前のように
あーしろこーしろって要求されてばっかだと
こっちは疲れちゃうじゃん?笑
そういう感謝を自然にできる
麻生さんとは与え合いたいなって。
…あ、きたきた!」
緑の海と白い丘の境い目に
さくらんぼが添えられたクリームソーダが2つ
私たちのテーブルに静かに置かれた。
「なんか、The! って感じのでいいね笑」
「うん笑」