第2章 【幸せがよく似合うひと】
ホントに神くんはもう……。
油断してるとこういうことを挟んでくるから
ドキドキさせられっぱなしで
心臓が持たないよ…。
そんなことを思いながら
神くんと並んで歩いていると
……気のせいかな?
なんだか小指同士が
よくぶつかる気が…
何度目かのぶつかった瞬間、
小指と薬指を少しだけ握られて。
どちらからともなく立ち止まった私たちの
視線はぶつかり、私をまっすぐみつめたまま
神くんが言葉を紡いだ。
「実は前から、好きだったんだけど……
今日1日一緒に過ごして麻生さんのこと
もっと好きになっちゃって。
俺と、付き合ってくれない?」
「……え?」
「あ…、もしかして彼氏いたり…?」
「全然! いま…せん」
「そっか。いないならよかった。
てか、確認してから言えってね。笑
俺の気持ちはそういうことだから。
考えといてね?」
そうやって優しく微笑んで
私の指を握っていた手を離して
ポンポンと私の頭をなでる。
「…ポニーテール、初めて見た。
かわいいね。似合ってる。」
なんて言葉を残して
私を動揺させたかと思えば
「多分、そろそろだと思うんだよなぁ。」
何ごともなかったかのように
そんなことを呟きながら
喫茶店に再び向かう神くん。
「あ、麻生さん、あったよー!」
って、大きく手を振って私を呼ぶ彼。
「ありがとう! 今行くね!」
彼に駆け寄りながら
いろいろありすぎて
ショート寸前の頭の中を整理する。
神くんも私をなんて…
現実?
学校の王子様が私をなんて。
まさか、そんなこと…、
こんな私じゃ釣り合うわけないのに。
前からって…いつから?
考えたところでまとまるわけもないまま
神くんの待っているところに辿り着いてしまって
2人一緒に店内に入る。
「いらっしゃいませ! 2名様ですか?」
「はい。」
2名…。
たしかに、そうなんだけど。
なんでもない店員さんとのやりとりにさえ
ドキドキしてしまう私は
これから神くんとちゃんと話せるのかな、
なんて心配をしながら案内された席に着いた。
「俺は決まってるから…どうぞ。」
優しく微笑んでメニューを渡される。
一応、メニューに目を通してはみるものの
集中できなくて全く頭に入ってこない…。