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キミヲ、サライタイ。

第2章 2


川島はそれを確認してから、ゆっくり目を閉じた。
顔に温かい水がリズムよく降りかかる。

シャワーを浴びるように顔を振り、滴(したた)る水の一粒一粒を肌の表面で感じた。

念願が叶ったうえにすさまじい達成感と充足感で、今という時が川島の頭から跳躍しかけた。

すべてが終わり、お嬢様の息が少しずつ整っていく。

びしょ濡れになった川島はようやく目を開けた。

迷子になった少女のような顔で、お嬢様が口元に手をあて見つめてくる。その眼を凝視しながら、唇に滴り落ちてくる雫を舌で舐めた。

無味無臭のはずの液体だが甘い。
緑葉にたまった朝露(あさつゆ)を思わせた。

川島は顔に浴びただけでは飽き足らず、顎にすべり落ちてくる水を手で拭い、そのまま顔に首に髪にも塗りたくった。

肌細胞の奥の奥まで浸透させるかのように。

「はぁ……、はぁっ。お嬢様……」

「何してるの…やめて川島っ!汚い……早く洗ってきてよぉ」

悲壮さを感じさせるお嬢様の声に、いったい何を言っているんだという顔で川島は答えた。

「このお水は汚いものではありません。お嬢様がお考えになられているものとは、まったく違うものですのでご安心ください」

「それはわかってるけど……」

口ごもるお嬢様に構わず、びしょ濡れになったまま川島は、敷いていたタオルケットを手にとった。

「さ、お風邪を召さないうちに拭いておきましょうね。少し脚を広げてくださいますか」

「ん……」

川島の顔と同様びしょ濡れになっているところを、タオルの繊維に吸わせるようにやさしく拭った。

「シーツ大丈夫かな。濡れてない?」

「少し濡れてしまいましたが、替えのシーツもご用意してありますから大丈夫ですよ」

万事ぬかりなく、と微笑み川島はミネラルウォーターで乾いた喉を潤した。

この液体がすべて、お嬢様の水だったらいいのにと考える。

ひとくち口に含み、川島と目を合わせず恥ずかしそうにしているお嬢様の唇に流し込んだ。

「んぅ……」

今度はこぼさず上手に、コクコクと美味しそうに飲む様子に、川島は胸がじんわり温かくなるのを感じた。

シーツを替えるためにふたりで起き上がる。

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