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キミヲ、サライタイ。

第2章 2


川島は、自分でも気づかないうちに呼吸が早くなっていた。太ももを撫でながら片方の手で膝を割り、少し開かせた。

柔らかそうな内ももがのぞく。

息をのむほど白い。
薄明かりに照らされて、なまめかしく艶を放っている。

半身を起こしたまま、口元に当てていたお嬢様の手が川島の髪にふれてきた。

そのままやさしく髪に差し入れられた手で、後頭部を少し押される。

押された勢いに任せて内ももに吸いついた。
瞬間、高い喘ぎ声が降ってきた。

「ッは…、ぁあ!」

音をたてながら何度もキスをしていると、白い肌に赤い花びらを散らしたくなり、川島はキスマークをつけようとしたが思いとどまった。

大切なお嬢様の肌に鬱血した痕(あと)を残すなんて……相反する気持ちが、また同時にせめぎ合う。

「お嬢様、ここに唇の痕をつけさせていただけませんか?」

また結局、欲望の方が勝ってしまった。

「そんなの…いちいち訊(き)かなくていいから。見えない場所にならいいよ」

訊けばこうして大抵のことは受け容れてくれる。本当に嫌なときは、容赦無く拒否されるのですぐに判断がつく。

それが解っているから、お嬢様の承認というヴェールで己の欲望を誤魔化しているのだった。

川島は自分の狡(ずる)さを頭から追い払い、目の前の肌に集中した。

キスマークをつける許しを得た。
どこにどうやってつけよう。

何も考えず闇雲に無数の痕を残したい気もするし、想いのこもった痕をひとつだけクッキリと残したい気もする。

「……川島?」

お嬢様の不安げな声に、気づけば唇に指をあて考え込んでしまっていた。

「ん…、お嬢様」

再び柔らかい肌に唇を寄せ、チュウ、と強めに吸う。

「ぁ…、痛…ぃ」

痛いと言われても吸い続けた。濃い痕を残すために、その分だけ鬱血させる必要がある。

愛してる、愛してる、愛してる、と念じながら川島は肌を強く吸った。

唇を離すと、真っ白な布に赤いインクを一滴垂らしたような模様が浮かび上がっていた。

これなら最低でも一週間は消えないはずだ。

お嬢様にオレの痕跡が付きつづけることになる。
以前、手錠がわりに贈ったブレスレットより強力な束縛の痕が。

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