第3章 お嬢様も楽じゃない
……昨日は楽しかったなぁ~
思わず頬が緩む。
「火神大我くん…」
昨日の夜、偶然会った男の子。
あの瞳は知ってる。
本気の瞳だ。
ああいう瞳をした人に出会うのは久し振りだったから、わくわくする。
……あぁ~バスケしたいな……
そう思っても簡単にはいかない。
なぜなら私は、
「ごきげんよう、ひなこ様」
「今日も良いお天気ですわね」
校門をくぐった途端、かけられる挨拶。
ごきげんようって……
どこのマンガの世界だよ……
なんてツッコミを入れながらも、
「ごきげんよう」
私も笑顔で返す。
すると女の子たちは頬を染め上げ、
「あぁ白波様、今日もお美しい……」
「あの笑顔、私女ですけど惚れてしまいそうです」
なんて賛美の言葉を発する。
あいにく、私はGLの趣味はないんで。
そう、私はいわゆるお嬢様。
日本で1、2を争うお金持ち、白波財閥の一人娘。
そして私が通う“ルーベルマリア女学院”は、超お嬢様学校。
おしとやかに気品ある女性がモットーのこの学園で、バスケをするのはかなり難しかった。
正直、私にお嬢様なんて向いてないと思うけど、白波財閥を継ぐものとしてそんなことは言ってられない。
今日も一日、お嬢様として頑張らないと!