第10章 閑話 : 黄瀬の思い出。
俺たちとバスケ勝負?
そもそもなんで勝手にそんな提案ができるんスか?
横を見ると、黒子っちも不思議そうに………いや、無表情だからよくわからないっスけど、なんかそういう風に見えたっス。
緑間っちなんかは怪訝そうに眉をひそめてる。
明らかに、 なに言ってるのだよこいつ って顔してるっス。
それを感じているのかいないのか、女の子は準備運動でもするかのようにピョンピョンと数回跳びはね、早く早くとこちらを急かす。
「黄瀬」
突然 赤司っちに呼ばれて、ビクッと肩が跳ねた。
ゆっくり視線を移すと、帝光中学バスケ部のキャプテンが、俺を真っ直ぐに見据えていた。
「お前が相手するんだ」
「……………えっ」
びっくりした。
このメンバーの中で俺が指名されたことも、あの赤司っちが女の子の提案を鵜呑みにしたことにも。
ところが、反論しようとする前に
「あなたが、勝負してくれるの?」
あの声が俺に向けられた。
恐る恐る彼女の方を見ると、黒子っちよりも20センチは低いんじゃないかという位置から、上目使いにこっちを見上げていた。
上目使いが、こんなに破壊力のあるものだったなんて、この時初めて知ったっス。
あぁもう、ズルい。
そんなきらきらした目で見られたら断れるわけないじゃないっスか。
「……はぁ、わかったっス。でも、手加減はしないっスからね」
ブレザーを脱ぎ捨て、シャツのボタンを2つ開ける。
ネクタイを適当に緩めて、軽く袖を捲った。
俺の言葉に怯むどころか、愉快そうにその顔に挑戦的な笑みを浮かべた彼女はビシッと人差し指を突き立てた。
「もちろんだよっ。
いつだって真剣勝負でしょっ!!」