第2章 放課後、小さな公園で
思わず引き止める。
「………何?」
このまま引き下がるなんて、男じゃねぇ……
「もう一度、勝負してくれ」
「……………次は、本気の勝負してくれる?」
「あぁ!」
俺が強く頷くと女はまた、花が咲いたような笑顔を見せた。
その様子に、氷が溶けるところを連想する。
本当、別人。
でも…………
笑ってたほうが断然いいな。
俺まで頬が緩みそうになる笑顔に
軽く胸を高鳴らせながら、
「言っとくが、俺は強いぞ」
宣戦布告。
「私だって負ける気ないよ!」
すっかり機嫌を取り戻した女は、上着をベンチに戻し、ボールを持って俺と対峙した。
「本番はこれからだよっ!!」
そう嬉々として言う姿、本当にバスケが好きなんだなと思った。
そんな奴に対してなめる、なんて最低な行為だ。
だからせめて、次は全力で行く。
「負けて泣いても知らねーぞ」
俺がそう言うとニヤッと笑って、
「負けないよ」
聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で呟いた。
女はついていたボールを掴むと
ゴールに向かって放り投げた。
ロングシュート!?
そう思い振り返るが、ボールの軌道がわずかに逸れている。
このままじゃゴールに入らない。
一瞬、がっかりした。
なんだかんだ言ってもこの程度か……
だけど、女の狙いはこれじゃなかったらしい。
少し下がって助走をつけると、
飛んだ。
正確に言うと体操選手さながらの、側転からのバック宙をした。
なにしてんだ?と思ったのもつかの間、俺は女の目的がわかった。
…マズイっ!
気づいて手を伸ばしたが、遅かった。
バック宙の一番高いところでさっき投げたボールをキャッチすると
その後ろ向きのまま、一人アリウープを決めた。
「…………」
まさか、体操とバスケを組み合わせるなんて
人間わざじゃねぇ……
俺はしばらく声を出せずにいた。
「いやーびっくりしたー。大抵の人は初めて私のバスケを見ると、全く動けないんだけど……君凄いね」
この状況で言われても、嫌味にしか聞こえない。
「君、本当は結構出来るでしょ。アメリカでやった経験もあるのかな?」
上着を羽織りながら女は俺のことを言い当てていく。