第8章 いつだって真剣勝負でしょ!
嬉しそうに握手を求めてきた女の子の手を握ったまま、離すタイミングを逃した私は、どうやってこの状況を打開しようか迷っていた。
すると突然
「…ぐふっ!」
涼太くんが脇腹を押さえてしゃがみこんだ。
………………えっ?
一体何が?
「おい黄瀬、おせーんだよ。シバくぞ」
私の背後から海常のユニフォームを着た男の子が涼太くんに罵声を浴びせながら現れた。
「もうシバいてるっスよ…」
心なしか、涼太くんが涙目に見える。
「………あ」
男の子を見て、気付いた。
ユニフォームのナンバーが4…
ていうことは、
彼が海常のキャプテンだ。
「あの、キャプテンさん」
私が声をかけると、面白いぐらいに彼の肩が跳ねた。
そんなに驚かなくても…
「あ~…ひなっち、笠松先輩は女子があまり得意じゃないっていうか」
いつのまにか復活した涼太くんが
ねっ? とでも言うように笠松先輩とやらの肩に手を乗せた。
「うるせーよ!絶対お前にパス回さねーからな」
「ちょ、それはひどくないっスか!?」
二人のまるで小学生のような微笑ましいやり取りに、思わず顔が綻ぶ。
なんか、こういうのっていいよね。
お嬢様たちはみんな猫をかぶってばっかで、こんな素で誰かと接したりすることがないから、素直に憧れる。