第8章 いつだって真剣勝負でしょ!
私はテツヤくんの方へ駆け寄った。
低いといっても、私より頭1つ分大きいテツヤくんを少し見上げる。
「私も、会いたかった」
そう言えば、基本無表情なその顔に優しい微笑を浮かべ
「ひなこさんも同じ気持ちで居てくれたんですね。嬉しいです」
わずかに頬を染めながら、そんなことを言うテツヤくん。
……………
テツヤくんってさ、言葉がストレートだからこっちも照れる。
「なんか、照れるね」
「そうですね」
そんな風に二人で笑いあってたら、
「ち、ちょっと!なんなんスかこの夫婦みたいな雰囲気は!?二人だけの世界にトリップしちゃダメっス~!」
涼太くんが叫びながら、私とテツヤくんの間に割って入った。
途端にテツヤくんが不機嫌になる。
「黄瀬くんはさっきまでひなこさんと抱き合ってたじゃないですか。独り占めは反対です」
「っ、だ……!?だだ抱き合ってたわけじゃ……」
自分のした行為のくせに、顔をゆでダコみたいに真っ赤にする涼太くん。
「あ、れは…その、会えたのが嬉しくて……つい。………あ!べべべ、別にやましい気持ちがあったとかじゃなくてっ!」
聞いてもないのに、涼太くんはしどろもどろになりながら、全力で言い訳してる。
そんなに否定しなくても、わかってるのに。
「あれだよね。涼太くんは挨拶がわりにハグしたんだよね」
「……………えっ?」
「アメリカじゃハグなんて普通だし」
「……さすが帰国子女ですね」
「ん~…なんか、そこまで気にされないのも複雑っスね」
「…ハグでこのリアクションの薄さだと、なかなか手強いですね」
「そうっスね」
テツヤくんと涼太くんが二人でこそこそ何かを、神妙な顔つきで話してる。
小さくてよく聞こえないけど。