第8章 いつだって真剣勝負でしょ!
「っ、ハァハァ……」
「ほうほう、ここが海常高校かぁ~」
「…ってめぇ、なんで息切れてねぇんだよ!」
ははっ、ブルジョアをなめないで欲しいね。
さすがに現役男子高校生(バスケ部)についていくのはキツいと思ったから、途中でタクシーを拾って校門の近くでおろしてもらった。
「なんでって、そりゃ私の体力のほうが大我くんよりあるからじゃない?」
癪だから、言わないけど。
さて、体育館はどこかな~と、辺りをキョロキョロしていると
「ひなっち!」
最近よく聞く声が耳に入ってきた。
その声のするほうへ、振り向こうとした瞬間
「……っ!?」
突然視界が真っ暗になった。
「めちゃくちゃ会いたかったっス!」
すぐ近く、頭上から聞こえる声は涼太くんのもの。
私の背中には彼のバスケで鍛えられた腕が回ってて……
私、涼太くんに抱きしめられてる……?
え?なんでこんなことに?
ハテナマークでいっぱいの私とは対照的に、涼太くんは嬉しそうに腕の力を強めてくる。
「えっ……あの、涼太くん!?」
「ん~、もう少しこのまま…」
そういいかけた涼太くんの頭に、バスケのバッシュが直撃した。
「ってぇ~……」
頭を抱えて悶える涼太くん。
い、痛そう…
「黄瀬くん、抜け駆けなんてひどいじゃないですか」
投げたバッシュを拾いながら、こちらに歩いてくる。
バスケをやるにしては低い身長。
一際影のうすいその人は…
「ひどいのはどっちっスか……黒子っち」
テツヤくんだった。
「………テツヤくん!!」
私が叫ぶと、テツヤくんは
「ひなこさん、やっと会えましたね」
にっこり笑ってそう言った。