第6章 責任取って欲しいっス!
「まぁまぁ、ゆっくり聞かせてもらおうか」
そう言うとメイクさんは、缶コーヒーを差し出した。
ひなっちのことを話す気はないけど、喉が渇いてたし、コーヒーは素直に受け取った。
タブを開けてさっそく口をつける。
「で?大切な子って、彼女?」
メイクさんの予期せぬ言葉に、口の中にあったコーヒーを盛大に吹き出した。
「うわ……汚っ」
コーヒーが少しメイクさんにかかってしまった。
「あわわ…すいません!」
「別にいいけど………でもその反応、図星だな?」
コーヒーまみれになったにも関わらず、まだその話を持ち出すメイクさんの執念は凄いと思う。
「彼女じゃないっスよ」
半ばため息混じりに言ってみる。
もし、本当にひなっちが俺の彼女だったら
きっとこんな風にのんびりモデルなんてやってない。
「え~じゃあ何?黄瀬くんの片想い?」
瞬間、頬に熱が集まるのが自分でもわかった。
メイクさんは言葉が直球過ぎると思う。
もう少しオブラートに包んで言って欲しいっス!
「え?図星なの!?うわーこんないい男弄ぶ子ってどんな子なんだろ」
「っ、ひなっちはそんな子じゃないッス!!」
ひなっちが悪い女みたいに言われて、黙ってられなくて、思わずそう叫んだ。
「へ~ひなちゃんっていうんだ、その子」
メイクさんのしたり顔に、俺の表情が凍りつく。
もしかして、全部作戦?
ひょっとしてメイクさん、かなりの策士?
俺は目の前で笑ってる人物に、急に恐怖を覚えた。