第5章 スルメとバスケ
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「ふぅ~」
今日は見学だけする予定だったんだけど、見てたら我慢できなくなって、結局二時間びっちりバスケした。
ちょっと疲れたけど、やっぱりバスケは最高だ。
寮の自分の部屋のドアを開けようとノブに手をかける。
「白波様!」
突然背後から声をけられた。
一瞬ビクッとする。
私は急いで猫背になっていた背中をシャキッと伸ばした。
「白波様は今お帰りですか?」
廊下ですれ違った女の子は、キラキラとした笑顔で尋ねてきた。
「ええ、丁度部活を終えてきたところです」
それに私は、完璧なお嬢様スマイルで返す。
そのスマイルに女の子は頬を染めあげた。
トップを争う白波財閥の娘だもの。
私だって、生半可なお嬢様じゃいけない。
全校生徒が羨むような、“完璧なお嬢様”を毎日演じてる。
小学生からそうやって頑張ってたから、今ではかなりの崇拝者がいる始末。
素の私を知るのは、極僅かな人だけだ。
「それでは、お休みなさい」
「お、お休みなさい!!」
適当なところで話を区切り、部屋に入った。
「……ふぅ~」
一般生徒の前では気が抜けない。
これ、かなり疲れる。
私は倒れ込むようにして、寮のふかふかのベッドにダイビングした。
ベッドの上でゴロゴロしながら、堅苦しい制服を脱ぎ捨てる。
手だけを伸ばしてテレビをつけてから、
ベッドの下に隠しておいたスルメを取り出して口にくわえる。
「ん~♪最高……」
これが私の至福の時。
マナーにうるさい執事やメイドがいる家では、絶対に出来ないことだ。