第9章 大きく羽ばたくまで
五虎退と愛染に案内してもらい急いで向かうと3分程でそれは見えてきた。
大きな木に影が見える。私は雛鳥だとすぐに分かった。
「急ごう。」
私は走るスピードを上げ、雛鳥の所へと走る。
「「あ!」」
っと2人の声が聞こえた時には雛鳥の体は木から離れ、重力に逆らう術が失われた。
落下する雛鳥の体を両腕に収める。
間に合った。
「雛鳥よ。巣から飛び立つ練習は、まだ早いのではないかね?」
目を瞑っていたが不思議そうに雛鳥は片目を開けた。
「……あれ?山鳥毛?え、あれ?」
自分の状況が分かってないのか、地面と私を交互に見回しているのがなんともおかしかった。
「雛鳥…あんまり、無茶は良くないな。
……怪我しているじゃないか。」
雛鳥の片腕の服に血が滲んでいるのが見えた。
雛鳥の胸元から小さな子猫がぴょんと飛び下り、五虎退の所へ行く。
「にゃう…。」
子猫は私を五虎退越しにチラチラと見ていた。
「子猫を怒るわけにはいかないな…。」
私の口からやれやれと思ったため息が出た。