• テキストサイズ

山鳥と雛鳥

第9章 大きく羽ばたくまで


子猫は飼い猫だったらしく、任務を終わらせ戻ってきた子猫(南泉)に頼み返しに行ってもらった。

「うん。腕が折れているとかはないし、傷も引っ掻き傷程度で指して深くは無い。
これなら、10日ほどで傷は消える。」

薬研藤四郎に診てもらい、雛鳥の腕は消毒した後ガーゼで傷を被われた。

「山鳥毛、間に合って良かったな。
五虎退たちから聞いたが、その高さから落ちて打ち所悪かったら骨折とかもありえた。」

薬研は出した用具を救急箱に戻す。
雛鳥はガーゼが気になるのか、それをじっと見ていた。

「あぁ、本当に。」

「山鳥毛…」

「ん?どうした?まだ痛むのか?」

「んーん…あとでお部屋、いってもいい?」

雛鳥はどこか申し訳なさそうという態度だった。

「あとでじゃなくて今、一緒に部屋に戻ろう。
今日は疲れただろう。
薬研よ、感謝する。」

「あぁ。」

私達2人が部屋に戻ると、雛鳥はしゅんとしていた。

「山鳥毛、疲れてるのにごめんね。」

「ん…?雛鳥、私をいたわってくれるのかい?」

「だってここ何日か遠足だったんでしょ?」

「まぁそれはそうだが。」

「なのに。」

私は雛鳥の頭を撫でた。

「雛鳥が巣を飛び立つまで、そんな気遣いは無用だ。
それに、子猫を助けようとしたのだろう?
立派なことをした。私はその気持ちを受け止めただけだよ。」

「うん…。」

私は机の前に座り雛鳥を隣りに座らせる。

「何度でも登って落ちてこい。
何度でも私は、君を受け止めるから。」

雛鳥は困ったように照れ笑いをうかべた。

「山鳥毛、ありがとう。」

そう言うと、雛鳥は私の頬に接吻をする。

「雛鳥…?そういうのはまだ早いんじゃないか?
どこで覚えたんだか…」

雛鳥はイタズラっぽく笑って誤魔化した。
きっと巣立ちは早いだろう…。

私は困ったように呆れ笑いを浮かべた。
/ 188ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp