第9章 大きく羽ばたくまで
(どうしよう…降りられない。
怖い!)
少女は前にも後ろにも行けなくなり、キョロキョロしていた。
胸元には生後2ヶ月程の小さな子猫がいる。
事の発端は遊んでいた3人の前に、カラスに追いかけられている子猫を見つけたところだった。
「ん?なんか、あっちカラスがうるさくねぇか?」
「…?あ、本当ですね。」
「どうしたんだろう?行ってみる?」
3人が騒がしい場所に向かうと、カァーカァーと大きな声を上げ小さな子猫を追いかけ回されているのが見えた。
「あ、ねこちゃん!
ごこ!あいぜん、手伝って!」
少女は子猫を助けようと走り五虎退と愛染国俊は木の棒でカラスを追い払った。
子猫はその隙を見て走り出し近くの大きな木に登ってしまった。
「あ、危ないよ!」
木の上の方まで登ってしまいその高さに怖がって丸くなってしまった。
「あれは、高すぎますよ?」
「でも、放っておけないよ…。」
五虎退が危ないと言うが娘は運動の授業などで習った身のこなし方で大きな木に登っていく。
やっとの思いで子猫を掴み戻ろうとしたが、片手では下りる事が出来なかった。
「ごこ…どうしよう。」
「娘さん?」
「ねこちゃん抱いたままだと戻れない…。」
困っていると子猫が胸元で動いたため、バランスを崩した。
「あ!」
落ちそうになったが何とか、子猫を抱きしめたまま片腕で太い木の枝にしがみつく。