第9章 大きく羽ばたくまで
焦げ目がつかないように何度か様子を見ながらひっくりかえしていると、餅がぷくっと膨らみ始めた。
「うわぁ〜!美味しそうだね!
早く食べよう!」
熱めのしるこを持ち、ワクワクしている。
「ハハハ、そんなに慌てなくても餅は逃げんさ。」
そう言いつつ、雛鳥の器に餅を2つ入れた。
さすがに2人で入っていて七輪もあるとかまくらの中は、狭く感じたが嫌ではないなと思う。
さすがに5歳ともなると自分で熱さが想像できるのか、ふぅふぅと頬を膨らまして熱を飛ばそうとする。
ある程度飛ぶとパクッと餅にかぶりついた。
「ん〜〜〜〜!」
これ以上の幸せはないとでもいいたげな表情になる。
「なんで俺は縁側なんだよ…。」
子猫がムスッとした。
「仕方ないだろ?娘さんをからかったんだから…。」
「だとしても!」
加州に宥められるが子猫は納得してないと言いたげだった。
「ここ(かまくらの中)と変わろうか?子猫よ。」
私が出ようとしたが、雛鳥の方が早かった。
「やだ!!!山鳥毛はここ!
猫!そっち!」
グンと服を引っ張られた。
「ついに猫扱いされた!!」
子猫はショックだと顔に書いてあった。
2人のやりとりを見て、その場にいる者は全員笑う。
「あれ?山鳥毛はおもちいれないの?」
私の持つ器を見て雛鳥は上目遣いに聞いてきたので私は頭を撫でながら笑った。
「あぁ、胸がいっぱいで餅は入らないのだ。」
熱く甘いしるこがじんわりと、冷えた体を温めていた。