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山鳥と雛鳥

第9章 大きく羽ばたくまで


まったく、不思議な鳥だ。ふらりと現れてふらりと消える。雛鳥は姫がいなくなり、つまらぬと言った表情を浮かべていた。
ひゅうっと、北風が吹き冷たく頬を撫でた。
寒さに雛鳥は身震いした。

「うぅ…寒い。」

確かに今日はよく冷える。

「なぁ?かまくらとかやってみたら?
雪で家を作るやつ。」

そういえばと、加州が私たちに訊ねてきた。

「かまくら?」

「そ。雪で作った秘密基地。あれくらいの雪なら小さめのかまくらなら作れそうじゃないか?」

加州が指さしたのは私たちが雪かきをして溜まった雪の山だった。
雛鳥は秘密基地と言う言葉に目を輝かせる。

「秘密基地…!やりたい!」

「それはいいにゃ!
せっかく雪かきしたんだし、やろう…にゃ」

子猫はすでにやる気だった。
雛鳥は加州に促され、上着と手袋を取りに執務室へ向かった。
愛らしい姿がすぐに出てきた。
白い帽子とモコモコした白い上着。
何となくシマエナガを思い出させた。

「おまたせ!どうやってかまくら、作るの?」

子猫が説明しながら作り始めた。
私も手伝わされる。

「ここを土台にしてそうそう。」

2人が楽しそうに作っているのを見ながら、私は雪を運ぶ。

かまくらは小一時間で完成した。
その頃になると、ちょうど八つ時になる。
台所の方から小豆のいい匂いが中庭までやってきた。

「うわぁ〜!いい匂い!」

「本当だ…にゃ!今日のおやつはなんだ?」

2人がそう話していると台所から一期と安定がこちらへやってきた。

「うわぁ、なんか面白いの作ってるね。」

「本当だ、立派なかまくらですね。」

安定はこちらを見ると感心したように声を漏らす。

「さんちょうもうとなんせんと作ったんだよ!」

雛鳥はえっへんと胸を張った。
そこへ話を聞いてたらしく堀川もやってくる。

「あ、そしたらさ!七輪でおもち焼いて、お汁粉に入れない?今日のおやつはおしるこなんだけど、白玉にしようかなと思ってたんです。
でもかまくらの中で焼いて食べる餅は格別ですよ。」

雛鳥の目がキラキラ輝いた。
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