第8章 それが初恋というのか
「ん?あれ?こんなに手紙が?
どうしたんですかこれ?」
堀川が廊下からこちらを見る。
「ほりぃ!
えっと、ほりぃのは…」
雛鳥は堀川宛の手紙を探して本人に渡した。
「はいこれ!」
「僕にですか?」
期待が高まる目で堀川を見ていた。
「まだ読まないでね!夜になったら読んでね!」
「……ありがとうございます。」
堀川は受け取ると当番作業に戻っていった。
ある程度配り終わると既に琥珀糖になる寒天は固まっていたらしく、小鳥達が道具を持ってやってきた。
他の鳥たちも集まり、みなで型抜きをしたり千切ったりする。
「お花にハート!」
「こっちは丸ですね。」
皆が楽しそうにしている所、私と小鳥と一期は眺めていた。
「なぁ。」
「ん?なんだい?」
「ありがとうよ。アイツに手紙を書くって言う提案をしてくれて。
おかげで、また手紙書きたいと文字の練習が励みそうだ。」
「それは良かった。」
小鳥と話していると、一期が会話に入ってくる。
「全員分書いてたのですよね?」
「全員…ではないな。私はもらわなかった。」
「え?」
「目の前で手紙を書かれるのもなんだか気恥ずかしくて…。
雛鳥も他の鳥たちに書くのに必死だったんでな。
私の分は大丈夫だと伝えたんだ。」
小鳥は大きく笑うとお前らしいなと私の背中をバシバシ叩いた。
「小鳥…手加減してくれたまえ?」
そんな話をしていると、細かくし終わったと声が上がった。一期が、それを乾かしに置き場所を作ろうと鳥たちを連れていく。雛鳥もワクワクとした目でついて行った。
手紙…か。
年甲斐も無く欲しいとは言わない。
だが、ちょっとだけ皆が羨ましく感じた。