• テキストサイズ

山鳥と雛鳥

第6章 雛鳥は分かっている


チョロチョロと走り回る子鼠を雛鳥は楽しそうに見ている。

「おいでおいで」

雛鳥が手に乗って欲しいのか手を伸ばした。

「乾燥果実があれば来るんじゃないかな?」

私は餌袋から乾燥果実を取り出し雛鳥の手の上に乗せた。
子鼠はすぐに餌の匂いを嗅ぎつけたのかやってくる。

「あ、来た!」

手に取った乾燥果実を口いっぱいに詰める。
その膨らんだ頬はやはり、愛らしい。

子鼠の部屋探索を終わらせ、手を洗いに向かう。

ついでに台所に寄り、蜂蜜で甘くした温めた牛乳を雛鳥に渡した。

「小鳥から教えてもらったんだ。
これがあればある程度は寝れるだろうと。」

雛鳥はカップを受け取り、私と縁側に座った。
雛鳥が1口、牛乳を飲もうとする。

「あちち…!」

「大丈夫かい?よく冷まして飲みなさい。」

雛鳥はふぅふぅと冷ましてから飲むとほっとしたような息を漏らす。

1口飲めるとわかるとそれを一気に小鳥は飲み干した。
……が勢いがありすぎたのだな。
ケホケホと、小さく咳き込む。

「雛鳥…そんなに慌てて飲まなくても。」

「うん…。」

背中をさすっていると、咳も落ち着いてくる。

「……さんちょうもう。」

「ん?どうしたんだい?」

「…もしも、パパやママがいなくなってもさんちょうもうたちは居なくならないよね?」

私は唖然とした。

「……なぜそれを私に聞くんだい?
小鳥も母もいなくならないだろう?」

「ママ…また、体が悪くなってるかもしれない。
パパもここのお仕事ともうひとつのお仕事で危ないことがあるかもしれないって。
パパもママも大丈夫って言ってるけど…。」

驚いた。あんなに無邪気にはしゃいでる雛鳥が自分の親について勘づいているとは…。

「……そうか。小鳥も母君も私も雛鳥の前からいなくなりはしない。
母君のことはきっと優秀な医者が助けてくれる。
小鳥も雛鳥も私が守ろう。
私がいなくなっては2人を守れないからな…
いなくならないよ。」

頭を撫でると不安そうな瞳が揺らぐ。


「うん。」

雛鳥のその笑みは年相応とは思えないほど切なく感じた。

「さぁ、今夜ももう遅い。
雛鳥が寝るまで傍にいようか。」

立ち上がり私は部屋に連れていこうとした。
/ 188ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp