第6章 雛鳥は分かっている
しかし、雛鳥が私の手を握る。
「さんちょうもう…」
「ん?」
「おんぶ…してほしい…
もう、保育園のお姉さんだけど…えっと…」
モジモジと困ったように目が行ったり来たりする。
私は上着を脱ぎ、庭に出てしゃがんだ。
「その上着を肩からかけなさい。
ほら、来るんだ。」
雛鳥は私の上着を羽織ゆっくりと私の背中に体重を預ける。預けたことが分かったら私は立ち上がった。
背中に来る重みは大して重いわけではなかったが、久しく抱っこをしていない体に成長というものを実感させられた。
「こんなにも大きくなったんだな。」
「だってもう、保育園のお姉さんだよ。
次の誕生日迎えたら1番上だもん。」
「本当に…大きくなっているんだな。」
私はなんだか胸の辺りがきゅうっとなるのを感じた。
雛鳥を背負い歩いていると雛鳥が背中に頭も預けてくる。
「さんちょうもうのせなか、パパみたいに大きい。」
「ハハハ、そうかな?」
「うん。温かい…。」
「……あぁ、私も雛鳥の温かさがわかるよ。」
「うん……さんちょうもう…」
「どうした?」
しばらく返事がなかった。
声も眠そうだったから、きっと眠ってしまったんだろう。
私はしばらく、雛鳥を背負ったまま月を眺めていた。
思ったよりも巣立ちが早いかもしれぬと、今はまだもう少しだけ雛のままでいてほしいと願った。