第7章 シルバーブレット
とっくの昔に置いてきた筈の名探偵コナンと言うこの世界に来て
あんなに好きだった人物のその後を知れなかった事実も、あんな理由で離れてしまったのも、また...今目の前に居る彼に惚れてしまっているのも
何だか少し悔しいと言うか、情けないと言うか...
淡々と話していた赤井さんとは対照的に、勝手に複雑な気持ちに追いやられる。
少しキョトンとしながら私を見る赤井さんの顔が徐々にボヤけてきて...
「みなみ、どうしたんだ」
何故こいつは今にも泣き出しそうな顔で俺を見ているんだ?
一体何を思ってそうなっているんだ。
『いや...だってっ.....』
俺の過去を聞いて泣き出す女も居るとはな
女の涙は好まんぞ。
「ほら、来い」
ソファから立ち上がり、隣に来てくれて肩を抱き寄せてくれる赤井さん。
「何をそんなに泣く必要があるんだ」
大きな暖かい手で肩をポンポンとしてくれる赤井さんの声はとても優しくて。
ベージュのジャケットから覗いた紺色のシャツから伝わる赤井さんの体温に安心すると、何故だかまた涙が込み上げてくる。
この状況全ても現実世界での辛かった経験も、赤井さんによって大きくて包まれているみたいで。
今度は髪を撫でてくれる。
「まるで子供のように泣くんだな。何か不安事でもあるのか?」
この心情に気付かずそんな事を言う赤井さんが少し可愛らしく思えてしまって、それが何だか可笑しくもあって...
『うう...ん、何でもないです...』
腕の中で小さく首を振るみなみ。
一体何がこいつをそんなに...
「安心しろ、お前には俺がついている」
頭上から降ってきたその言葉は、どこか重みもある様に聞こえて。
だけど嬉しくて。