第5章 交差
『でも、安室さんを待たせる訳にはいかないので』
もう3時間近く吸ってないから本当は吸いたいけど…
「僕にはお構いなく、僕の周りにも喫煙者は居るので…吸えないのは辛いでしょ?」
『は、はい…では、お言葉に甘えて…』
「ごゆっくり」
優しく微笑んでくれる安室さんに礼を言って喫煙所へ。
幸い人は居なかった
早速煙草に火をつけて、肺からゆっくり煙を出すと力が抜けてく様な気分でもあり…
スマホを見ると沖矢さんからメッセージや不在着信が合わせて10件以上届いていた。
内容は主に、無事であるのかどうか、何処かへ行っているのかどうかについての連絡だった。
返信も無く電話にも出なかったからね…通知切ってて気付かなかった。
沖矢さんに嘘をつくのは申し訳ないけれど、寝すぎた事と散歩に行く事をメッセージで送った。
『安室さん、お待たせしました!』
「みなみさん、おかえりなさい。行きましょうか」
スっと差し出された手をそのまま自然に繋ぐと優しく握り返してくれて
そういえば沖矢さんとは手繋がなかったなって。
沖矢さんにもあんなにドキドキしてたのに、今は安室さんにも同じ様にドキドキしてる。
けど、別に沖矢さんと付き合ってる訳でも何でも無いし…
この後安室さんとどうなるんだろう…
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FBIの方で用がある為みなみには予め学会という設定でメッセージを送った。
俺が米花に居ないとするとこいつはどんな行動を取るんだ?
スマホを確認出来る時に、バレない様に見るようにはしていたが…
ポアロに居るのか?何故一件も連絡を寄越さんのだ。
その後も確認したら場所は変わっているし動きが早い。
みなみが沖矢に惚れていると分かった以上少々油断していたが
まさか降谷君とも会っているとは
一体何の用でだ?
問い詰めてやりたいが出来る訳も無く、ふざけた嘘のメッセージしか届かん
俺に何の隠し事をしているんだ。
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