第5章 交差
『安室さんと沖矢さんはどう言った繋がりがあるんですか?沖矢さんからは、安室さんの事を聞いてきた事が無かったので…』
何故それを態々聞く?彼女は沖矢昴が赤井だと知らないのか?
それが本当だとすれば僕と赤井の事も知らなくて当然だが…
「ええ。彼とは…一言では表せない仲なんです。」
少し言葉を詰まらせながらそう話す安室さんの横顔は
まるでゼロの執行人の時の様な、怒りに満ち溢れた様な表情で、ハンドルを握る手に力が篭っているのが伝わってきた。
『そう、だったんですね。なんか、ごめんなさい…』
「良いんだ。みなみさんは何も悪くない」
悪いのは赤井だ。
ヒロの事も。
そして、お前がみなみさんなんかと“友人”だと言う事も。
いや。“要人”か?
どちらにせよ赤井から遠ざけて困らせてやりたい。
『安室さん…』
「みなみさん…なんだかすみません。嫌な空気にしちゃいましたよね…」
『そんな…!とんでもない!安室さんとお話出来て凄く楽しいですよ?』
さっきはあんなに怖い顔をしていたのに、今は何だか切ない顔をしている安室さんの事が心配になる。
「みなみさんは優しいんですね、お気遣いありがとうございます。そういえば、みなみさんのお住いはポアロから近いんですか?」
少し緩くなってからまたドキッとする様な質問に変わって少し心臓に悪い…
安室さんが車を走らせてからもう30分程経っていて、東京タワーが見えてきた。
こっちの世界にもちゃんと東京が存在して、勿論東京タワーもある事がまた不思議に思えたし漆黒の追跡者を思い出すなって…
こんな事考えてる場合では無い!
『はい、歩いて十数分の所に…』
東京の景色は向こうに居る時から好きだった。
折角この景色を見るなら探りなんかじゃなくてもっと普通のデートとしてが良かったな…
「そうですか、後でみなみさんを送る時に知っておくべきかと思いまして」
!それはまずい…
『い、いえ!近くのコンビニで大丈夫ですよ!』
「あれ?その方面にコンビニは無かった筈ですよ?」
『えっ?!』