第5章 交差
今度はポアロの中から見えない位置で立ち止まって一度深呼吸。
何とも言えない胸のざわつきを感じながらも店内へ。
「いらっしゃいま…みなみさん!」
入ると真っ先に安室さんと目が合って一瞬動揺した様にも見えたけど名前を呼んでくれて入口まで来てくれた。
怪しまれてるのが分かっていたとしても正直嬉しい
『安室さん、こんにちは』
「みなみさんこんにちは、来てくれたんですね。此方へどうぞ」
カウンター席へ案内され、店内を見渡すと男性のお客さんが二組
今日も梓さんは居ないのかな?
「みなみさんが来て下さるとは思わなくて驚きました、嬉しいです。」
『ありがとうございます、この間の時のお礼も兼ねて…あの時は色々失礼しました、それと本当にありがとうございました』
「良いんですよ、みなみさんの美味しそうに食べる姿が見れたので。ですが…本当に良かったのですか?」
安室さんが聞きたい事は間違いなく沖矢さんの事だろう。
『はい!大丈夫ですよ』
「それは何よりです、御注文は何になさいますか?」
あの時に食べた以来実は凄く恋しかった味のハムサンドとアイスレモンティーを頼んだ。
店内が空いているお陰で2つとも直ぐに提供された
『いただきます』
「召し上がれ」
『ん!やっぱり美味しいです!』
本当に美味しい。この世界でも食べ物が美味しいのは、当たり前だけど一緒なんだね
「それは良かった!みなみさんは相変わらず美味しそうに食べてくれますね、作り甲斐がありますよ」
そういえば私が食べ始めた時から他に作業しているとはいえ
ずっと安室さんに見られてて…何だか恥ずかしい
『流石です!安室さんは何でも出来ますね』
「何でも?…それは少し褒めすぎですよ、でもみなみさんに言われると嬉しいですね」
今一瞬動きが止まった気がするけど謙遜しながらも喜んでいる安室さん
“何でも”って表現はちょっとまずかったかも。
でも、これも演技なんだろうけど心做しか私も嬉しかった。
『安室さんだって、少し褒めすぎですよ〜 でもありがとうございます』
私を探りたいのであろう安室さんとの会話だとしても自然と笑みがこぼれた