第24章 その先に待っているもの
『そう、だと、良いですね…』
「ええ、貴女なら大丈夫ですよ」
私のこれが見えていなかったら、きっと今頃はもう少し違った未来が見えていたりしたのかな。
なんて風にも思えてしまった。
彼の事は何も知らないのに、何かをサラッと話せてしまうぐらい
自分のペースを彼に乱されている気がした。
まだ彼の名前すらも知らないのに。
彼の事を知りたかった。
『あの、』
思い切って踏み出してみようとした時、走る足音が徐々に近づいてきた。
「みなみさん!」
『あ、安室さん!』
足音の正体は安室さんだった。
さっきはあんな取り乱した感じで安室さんに電話をかけていたのに、そこから何も返さないまま今この状態になっている事に申し訳なく感じた。
「みなみさん!大丈夫か?!怪我は?」
駆け寄ってきた安室さんが肩に腕を回しながら、顔を覗き込む様に聞いてきた。
『大丈夫です、路地を走っていた時ぶつかってしまって、それで助けてもらっていました』
「いえ、私は助けただなんてそんな大層な事は何も」
「そうか…怪我が無くて良かったよ」
「それと、貴方にも礼を言わなければですね。確かに彼女を追っていた男性は見つかっていないのでまだ危険ですが、どうやら貴方のお陰で落ち着けたみたいなので」
何故だろう。
安室さんの言葉が彼に対してどこか少し棘のある感じがする。
「偶然此処に居合わせたまでですよ。例え数分の間でも困った女性をこんな場所で一人放っておける訳が無いのでね」
そして彼もどこかさっきとは様子が違うし、安室さんの表情は少し怖い。
「ホォ、それはどうも。彼女は今朝から体調が優れていないので僕達はこの辺で失礼します」
安室さんが体の向きを変えると共に来た方向に体を向けた。
『あの、本当にありがとうございました』
「とんでもない、呉々もお気をつけて」
『はい、失礼します』