第24章 その先に待っているもの
「ホー、貴女の様な女性にそう言ってもらえるのは嬉しい事だ。まあ、ある意味これも待ち合わせですけどね」
足元に突然やって来た野良猫の顎元を、膝を曲げて撫でながら彼はそう言った。
猫はとても御満悦そうな様子で彼に少し懐いているみたいだった。
『え?あ、なら…やっぱり私はここで』
「その必要は無いですよ。これは私にとって長い待ち合わせの様なものになるのでね」
『長い…待ち合わせ?』
「ええ、そうです。まあ最も、私が一番会いたいと思う者にはもう会えたんですけどね」
そう言いながら猫を撫で回す手を止めた彼が立ち上がると
今度は猫が彼を求める様に甘えた声を発した。
『そう、だったんですね』
彼の言葉や考えが少し理解出来なかった。
恋人への返しはどこか濁されたし、彼の言う待ち合わせという言葉も分からなかった。
もしかしたらあまり聞いてはいけない事を聞いてしまったのかもしれない。
この短時間で妙に動き出していた心は自動的にストップがかかったと同時に猫は去っていった。
「そういう貴女は、今お相手がいらっしゃるんですか?」
『私ですか?ん…居ない、です』
「そうでしたか。てっきり居るのかと」
返答をした後、少し間があった彼はそう言いながら
私の首元を不思議そうに見つめてきた。
『えっ?!あ!これは…その』
「大丈夫。彼からはきっと、とても愛されていますよ」
凄く恥ずかしかったしもどかしかった。
これを付けた相手も分からないし、何もかも私の記憶には残っていないから
もしこれを付けた相手と真剣に付き合っていたのだとしたら
私のしている事は最低になる。
だけどそれらしき人から連絡が来ないのはきっと…
そういう事なのだろう。
『そう、なんですかね』
それを誤魔化す様に乾いた笑いをする事しか出来なかった。
「ええ、そうですよ」