第24章 その先に待っているもの
会釈をすると、彼はまたあの貼り付けたかの様な笑顔を見せた。
一体彼はなんだったのだろう。
あの短時間でこんなにも心を動かしてくる様な人は今までに居ただろうか。
思い出せないけど、彼の見た目にときめいたのも事実。
だけど、彼のあのハッキリとしない言葉からすると
きっと彼には忘れられない人が居るのかもしれない。
自分だって今こんな事をしている場合じゃないし、彼の事はもう忘れよう。
「みなみさん、大丈夫か?歩けそう?」
『はい、沢山走ったから疲れたけど…さっきので凄く休まったから大丈夫です』
「無理はしないで。すぐそこに車停めてあるから」
『ありがとうございます…』
路地を抜けると、あの白いスポーツカーが止まっていて
そのまま助手席のドアを開けてくれた。
運転席に安室さんが乗り込むと直ぐに車は動き出した。
『安室さん』
「ん?」
『その…突然あんな電話してしまってごめんなさい。それなのに来てくれて本当にありがとうございます』
「当たり前さ。心臓が止まるかと思ったよ、本当に。でも無事で良かった」
『丁度バイト中でしたよね…ごめんなさい』
「それなら早退させて貰ったから大丈夫だよ。所でその追ってきた男の特徴は?」
『えっと、外車に乗ってて』
外車と言った瞬間、安室さんの目の色が一瞬変わった気がしたのを見逃さなかった。
気の所為かもしれないけど、あと安室さんの様子を見るからにどこか少し起こっているみたい。
でも、それも当たり前だよなあと思いつつ
それについては後で話そうと思った。
「外車に乗っていたのか?色は?黒だったか?」
『いや、白い感じの車だったかな…それで、その人自体は体格の良い外国人で、日本語で話しかけられました』
何故黒なのか聞いてきた理由は分からないけど、車の色を話した瞬間から安室さんの瞳は元通りになったというか…
これも心做しかもしれないけど。