第24章 その先に待っているもの
次第に涙も引いてきて呼吸も整うぐらいにまでなれた。
「大丈夫ですよ、ほら、大きく深呼吸をして」
路地の端に寄り、今度は対面の状態で背中を摩ってくれて
言われるがままに深呼吸を数回繰り返すと気分も徐々に戻ってきた。
まだ出会ったばかりだと言うのに、そして初対面な筈なのに
この人の声も言葉も大きな手で優しく摩ってくれる手も、自分を安心させるには十分だった。
通行人から見えないよう、さり気なく通路側に背を向け隠す様に立ってくれている優しい人だ。
『大分落ち着いてきました』
「ええ、どうやらその様ですね。この手はもう必要無さそうですね」
『あっ…なんか、すみません…凄く助かりました』
「いえ、お役に立てて何よりです。ですが呉々もお気をつけて。まだ近くに居るかもしれないですから」
『はい…あ、あのっ』
「どうされました?」
『その…全然無理だったら大丈夫なんですけど、もし待ち合わせとかしてるなら断っていただいて結構なんですが…』
『友人が来てくれるまで、一緒に待っていただく事って…』
「ええ、勿論」
何を思ったのか、自分でもこの発言をした数秒後に驚いてしまった。
出会ったばかりだと言うのにこの空気感は穏やかな時間が流れていて。
そして彼に用事が無い事にも少し嬉しく思ってしまった自分が居た。
『えっ、良いんですか…?』
「ええ。まあ、魅力的な女性を一人此処に置いていく様な男に見えたのならそれは心外ですが」
『あ、いや!そういうつもりでは無くて!でもここで何をしていたんですか?貴方も凄く、その…魅力的だし、てっきり…』
「へえ。その是非ともその続きをお聞かせ願いたいですね」
『えっと、彼女さんとかと…』