第4章 新しい人生
「みなみさん、今日はとても有意義な日でしたね。貴女を更に知る事が出来た」
こういう言葉もあの現実世界で言われても何も響かないんだろうなって思うのに、この人に言われると凄く嬉しくて。
『私もです、沖矢さんと御一緒できて凄く楽しかったです』
そのまま無言でお互いを見つめ合うと、また大変な事になりそうだったから
そのまま切り上げて部屋まで荷物を運ぶと言う沖矢さんの提案を断って部屋へ戻った。
私ってこんなに発情期の動物みたいだったっけ?沖矢さんに出会ってから完全に何かが狂ってきてる…
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女との買い物なんて長くて退屈な物だと思っていた。今までは。
なのにこいつとは苦痛が生じない
こいつは今楽しめているのか?恐らく先程の出来事が頭を邪魔しているのだろう、俺も同じだ。
だが今はどうする事も出来ないのが現実。
こいつに似合いそうなそれっぽい衣類を渡せば素直に喜んでるみなみ。
俺の選んだ物を身に付けさせたくなった。
俺はいつまでみなみの前で沖矢のままで居られるか。
沖矢が俺だと勘づいてきているか?
沖矢の状態でこいつと楽しむのも悪くは無いが。
相手の仕草や瞳を見れば考えている事ぐらいは分かる。
この危険な状態を切り上げてくれたみなみ。
荷物を運ぶのを拒否するとはな。
だがこのまま部屋に行ってたら続きをしていたかもしれない
これで良かったんだ。
こんな呑気な事を考えている場合では無いが
みなみと居る時は、束の間だが常に危険と隣合わせの日々を忘れる事が出来る。
勿論、みなみをそんな目に合わせはしないが。
こいつと居れば居るほど沖矢と俺の境界線が狂いそうだ。
だが付き離す気も無ければ逃がすつもりも無い。
今後としても、こいつを俺達側に置けば有利になると悟った上での行動だと言う事を忘れてはいかんな