第23章 追憶の果て
池田さんの言う事故は多分自分の事なのだろう。
それにかなり最近の出来事だし、改めてここと向こうの時間の流れの違いを感じる。
『あ、大きな病院は一番近くてもここからは4キロ程だそうです』
「そうか。ならばそれは明日にしよう」
『えっ?今日じゃなくて大丈夫なんですか?』
「ああ、色々と話しておきたいこともあるしな」
なぜ病院なのか分からないままだけど、赤井さんはさっきと変わらない表情をしているから、これはきっと安心してもいいのだろう。
家に着く頃には外もだいぶ暗くなっていて、ここに来てからはかなり時間が経っている
『赤井さん、お腹空きませんか?』
赤井さんの方を見ると丁度マスクと帽子を外している最中で。
「そうだな、あれから何も口にしていない事だしな」
『はい!とりあえずご飯にしましょう!』
「みなみ、その冷蔵庫の中身じゃとてもじゃないが腹を満たす事は出来んぞ」
『えっ』
冷蔵庫に向かおうとすると赤井さんに言われた言葉でハッとする。
そうだった、確か冷蔵庫の中にはもう大したものは…
赤井さんがしっかりこの部屋を見て回っていた事を推測できる言葉にどこか可笑しくもなり。
結局、その日は出前で済ませる事にした。
『赤井さんと出前食べるの凄い久々な気がします』
「そうだな、最後に食ったのはみなみを安室君の所から迎えに行った時だったしな」
『そうでしたね』
不意打ちに出される零の名前にドキッとしてしまった。
零とはここに来る前に会ったばかりだったし、少しぎこちない反応をしてしまった。
向こうでは時間がどう流れているのだろうか
突然いなくなって連絡も取れない赤井さんの事を心配する人は居るはず。
だから早く向こうに戻らなきゃいけない
『ところで、どうして病院なんですか?』