第23章 追憶の果て
「これはまだ不確かなのと、到底有り得ん話ではあるんだが」
『はい』
「お前はこの世界でまだ死ねていないのではないか?」
『えっ?死ねて、ない...?』
「そうだ。向こうで転生をしたものとみなみは思っていたのだろう?
だが実際は元居た世界でもああして他人に認識される事が出来る。
死んでいたら有り得ん話だろう」
『確かに...』
「俺達の居る世界に何故来れたのかは分からんが、恐らく眠ったままの肉体がその病院にあるのだと俺は推測している」
赤井さんの口から出た言葉は到底信じ難い事ではあるけど、一理ある気がする。
『もし、そうだったとして...あの世界にはどうやって戻れるんだろう...』
「問題はそこにもあるな。ケリを付けろという事でもあるんじゃないのか?」
『ケリ?』
「ああ。現実離れしすぎているが、いつまでも此処と向こうを彷徨う事は許されんのだろう」
『そっか... 私あの時、いやずっと前からなんですけど、赤井さんの居る世界に行けたらって...いい歳してそんな事ばかり考えていたんです』
赤井さんの事がずっと好きだった事は既に話しているけど、本来は存在しない世界にずっと行きたいと思っていたなんて事を改めて伝えるのは
あまりにも恥ずかしくて赤井さんの顔が見れなかった
「みなみ、それは考えていたのでは無く、そう願っていたのではないか?」
『願っていた、か...言われてみると確かにそうですね』
「有り得ん話だがな。まあ今はそれに懸かっていると言っても過言では無いぞ」
“強く願う”か...
赤井さんの言う通り有り得なさ過ぎる話だけど、考えられるのはもうこれしか無い。
『赤井さん、ずっと色んなことに巻き込んでしまって本当にごめんなさい』
恥ずかしかったのもあるけど、何よりも申し訳なくて赤井さんの顔が見れなかった
「みなみ、顔を上げろ」