第23章 追憶の果て
「みなみ、それも俺か?」
『あー…はい、そうです』
さっきと同様、赤井さんの視線が今度はバッグに付けられた赤井さんと沖矢さんのマスコットキーホルダーに向いていて。
付けていた事をすっかり忘れていた為、あの頃から大事に持っていた物を本当に好きな人にこうして見られているのは何とも言えない恥ずかしさがある
赤井さんはどう思っているんだろう?
もし自分が逆の立場なら普通に怖いとも思ってしまう…
「ホー⋯」
手首に掛けていたバッグは気付けば抜かれ、ぶら下がるマスコットを隣で手に持って目視しながら歩いている赤井さん。
それを可笑しそうに見つめる赤井さんの様子はどこか安らいで見えて、それが愛おしく感じた。
歩き出して程なくすると例の交差点が見えてきた。
「此処か。さほど見通しが悪い訳では無いようだが、車通りはかなりある方だな」
辺りを見渡しながらそう言う赤井さん。
あの夜は自身の状態も万全では無かったのはあるけど、ちゃんと青信号で渡った。
だけど車が猛スピードで走ってきて⋯
この場所で改めて記憶を蘇らせると鮮明に脳内に映し出されて
あの感覚も全て、全てを思い出せた今では何か恐怖すらも感じる
「みなみ、この近くで総合病院等の救急車の搬送受入に適した病院は何処だ?」
『えっ?病院、ですか?』
「ああ、そうだ」
辺りを見渡していたかと思っていた赤井さんの口から出たその言葉に少し驚いた。
だけど赤井さんは何かを確信、どこか核心をついたかの様な表情をしていて。
変装に変装を重ねた沖矢昴の状態でも、それはよく伝わってくる
あの頃あれだけ見ていたのだから
きっと赤井さんは手がかりを見つけてくれたのだろう
蘇った記憶の中で、あらためてめのまえでそれを見れる事が嬉しかった