第23章 追憶の果て
「ああ、勿論だ」
そう返事をして玄関へ向かう素振りを見せる赤井さんを呼び止めてしまった。
「ん?」
『あの…やっぱりこっちでも一応変装はした方が良いかと⋯』
沖矢さんの状態でも、もし一緒に歩いてる所を存在を知っている人に見られたどうなる事やら…
そもそも今こんな心配をしているのは世界中で自分一人だけだろう
まあ心配と言っても幸せな意味合いを含む方の心配だけど…
「ここなら少しは羽根を伸ばせるかと思ったんだが、そう簡単にはいかない様だな」
一瞬間があった赤井さんは微笑しながらも、どこか少し不服そうに納得した
確かに普段から変装をしなきゃいけない赤井さんが組織の目が無い世界ぐらいは少しでもありのままで過ごして欲しかったのもある
いつ向こうに戻れるのかも分からず、そもそも戻れるかどうかすらもまだ何も分かっていない状態。
赤井さんにはやらなくてはならない事が沢山残っている
だからその為にも早く手がかりを掴まなければいけなくて、そんな事は分かっているけど…
普段よりもどこか安らいだ様子の赤井さんを見ると、少しはここでゆっくりして貰うのもアリなのかな。なんて思ってしまう
「このくらいなら、人目を欺けるだろう。どうだ、みなみ」
『はい!それならバッチリですね!まあ、オーラは隠せてないけど…』
前に買ったニット帽子を被ってもらい、マスク、そして眼鏡を外してもらった沖矢さんの姿は初めて見る
新鮮なその姿もやっぱり様になってるんだよなあ…
まあこれでも気付かれる可能性はありそうで安心は出来ないけれども、素顔になるよりは遥かに安全度は高い。
『よし、行きましょう』
あの時持っていたバッグを持ち、外に出た。
ここに来てから割と時間が経っていた為、外は夕日が顔を覗き出している