第23章 追憶の果て
『あ、かいさん…?』
「みなみ、大丈夫か。ずっと魘されていたぞ」
暗闇と、眩しい光から抜けた先は
この不可解な現実だった。
あの声は赤井さんだったんだ
どうしてそんな事すらもすぐに気付けなかったのだろう。
長い夢を見ていた。
だけどそれを夢と片付けてしまうにはあまりにも生々しく
「汗が凄いぞ。どんな悪夢を見ていたんだ?」
違う
あれは夢なんかじゃなくて、記憶だ。
そうだ、そうだったんだ。
私はあの世界に行く直前も、ちゃんと好きだったんじゃん…
「体調は大丈夫か?熱は無い様だが」
隣りに座り、額や頬に手の甲を当てながら体温を確認する赤井さんの手首を掴む。
「どうした」
『赤井さん、全て思い出したんです』
目覚めてから、赤井さんの問い掛けに応じる余裕が無かった。
丸ごと抜けていた記憶が今一気に蘇った訳で。
「ホー?そいつは全て聞かせてもらうぞ」
成程。
それならさっきからのみなみの動揺に理由が着くな
そんな事が起きているとは到底信じ難い事だが、今置かれているこの現状が全てだ。
みなみは自ら命を絶った訳では無かった。
これでは殺人と変わらんだろ
話に拠れば、そのタイミングで起こったのは不運なのか、そうでは無いのか
それなのに今此処に存在しているという事は一体どういう事なんだ。
事故死として、みなみがまたこの世界に戻ってきた理由は何だ?