第22章 またおわり?
ロープを買いに行かないと。
まるで何かに取り憑かれたかの様に躊躇する事も無く、体が軽かった。
ネットで買えば明日には届くのに、それが待てなかった
財布を持って家を出て店まで歩き出す。
ロープを買ってから遺書を書こうと思う
友人には今日のお礼を送っただけで、この事を言うつもりは無い
親にはどうするべきか正直迷っている。
それ以外にもやる事は残っているけど、もう逃げたかった
そしてただ、ひっそりと死にたかった。
あまり人気の無い道を歩き、赤信号のままの横断歩道で足を止める。
自分の感情がよく分からなくなっているのも事実
だけどそのまま生きていたくは無い
だけど今日はそんな中でも少し良い日だったと思う
だからこそ、それを胸にしたまま死ぬのが良いタイミングな気がして。
今の自分は他人からしたらどう移っているだろうか?
これからロープを買って首を吊ろうとしているとは見えないだろう。
どこか一点に視線を集中をさせながら、青信号を知らせる音と共に歩き出す
何故だろう。
早く渡らなければいけないのに、足が鉛の様に重くて上手く歩けない
左からは恐らくスピードを出した車が迫ってきている音が耳に入っているというのに。
それは、多分一瞬の事だった。
一瞬の筈なのに、その瞬間だけはスローモーションの様に感じた
固く冷えたアスファルトをこんなにも全身で感じる人間は限られているだろう。
人気はあまり無い筈だったのに、悲鳴や人の走る足音がこちらへ迫ってきている。
冷たく感じていたアスファルトも次第に生暖かくなってきて
恐らく自分に話しかけているであろう誰かの問い掛ける声が
頭の中で何度も木霊しながら、やがてそれが遠のいて行く。
自分自身を終わらせる為の物を買いに行く筈が
まさか他人の手によって終わるとは。
こんなに間抜けな事があるんだ。
まだやる事あったのにな…
痛いよりも思い浮かぶのはそんな事で。
ただ麻痺をしているだけなのかもしれない
だけど、まさか自分がこうやって死んでいくとは思わなかった。