第21章 お咎め
そして面接日当日…
赤井さんといつも通り朝食を囲む。
『今日は何時頃に帰られるんですか?』
「どうだかな、まだ後処理が残っているのと他にもやる事がある。もしかしたら今日は夜になるかもしれんから先に寝てて大丈夫だぞ」
『なるほど、分かりました!頑張ってくださいね』
こうして先に家を出た赤井さんを確認して自室に戻る。
事前にこっそり購入していたリクルートスーツに身を包む。
リクルートスーツなんて着るのはいつぶりだろうか、向こうの世界では俗に言うオフィスコーデだったからこのスーツはどこか初々しい気持ちになり
1からやり直せる気もした。
赤井さんの帰りは遅くなるみたいだし、これがバレる事は無さそうで安心した
ヘアメイクを済ませて面接場所へ向かう。
だけどこの場所は…ポアロの前を避けては通れなくて。
零が今日ポアロに出勤しているのかも分からないしあれ以降連絡も取り合う事は無くなった。
もし鉢合わせしてしまったらどうしよう
正直かなり気まずい。普段通りに接する事が出来るだろうか…
ただでさえ面接で緊張して心臓の音がうるさいのに、こっちの方も忘れかけていた
余計に緊張する。
いろは寿し辺りから通行人に紛れつつ走ろうかな。
よし、それしかない。
いろは寿しが見えてきた所で歩くペースを早め、店側を歩いている人に紛れて走る事に成功。
だと思っていたのに…
「おお…こりゃあすまんねえ、姉ちゃん」
紛れる事にばかり集中させてしまっていたせいで、どうやら車から出てきた見知らぬおじさんにぶつかってしまった
『いえ、こちらこそすみません』
「いやあ アッシも気をつけんとねえ。お、就活かい?頑張ってきんしゃい!」
『あ、ありがとうございます!失礼します!』
「ヘイ大将 仕込み手伝いやすぜ!」
車の後部座席から降りてきたそのおじさんは眼帯に黒いジャケットに身を包んでいて、何とも言えないオーラみたいなものが漂っていた。
一見やばい人かと思ったけど、直ぐに謝罪して応援までしてくれたし
いろは寿しに入っていく声を聞いて、ただの優しい板前さんなだけだったみたい。
そしてそのままポアロ通過チャレンジにも無事成功して安全圏まで来ることが出来た。