第21章 お咎め
『見れません...』
「みなみ、」
『...』
もう見えてるに決まってるけど、こんな顔は赤井さんに見られたくなくて。
「お前の気持ちは良く伝わった」
目から涙を流すこいつの姿は悪くは無いが、かと言って俺の気分が良くなった訳では無い。
咎めは決まったが、それに対してこいつは何と返すかな?
まあ、それすらも想定内だがな。
「みなみ、俺はお前を離す気は無い。それは以前にも言った筈だ」
「だが、今の状況ではみなみにとっても少々困難だろう」
『そんな、事...』
いや、そんな事は...あるのかもしれない。
これは逃げじゃなくて、頭を冷やせというか。いや、それよりももっと最終警告の様な...
「今必要なのは一度立ち止まる事だ。だが、それはただ停止させる訳では無く、お前がしっかりと落ち着いたらまた新たに踏み出す。共にな」
それはつまり、恋人と言う関係性を一度リセットするという事だろう
分かってる、それがどういう事か。
だけど...分かってるのに、そのワードが嫌でも浮かんで来てはまた目尻から熱い滴が頬を伝う。
でも冷静に考えてみたらそれが一番なんだ。
これはチャンスでもあって、そのチャンスを無駄にしたくない。
『分かりました... こんな、私の為に...ありがとう ございます...』
「悲しむ必要は無いさ、だが成長をする機会を無駄にしてはならんぞ」
『はい...』
赤井さんの声は まるで泣いている子供を宥めるかの様に優しくて、温かくて。
だったら次は今よりも、他の面でも成長したい。
その為にはここを出る事が必要なのかもしれない
『赤井さん...私、ここ...出ます...』
立ち上がって、声を振り絞って出した言葉は情けなくも聞こえた。
そいつは困ったな。
「みなみ、待て」
リビングを出ようとすれば、赤井さんに腕を掴まれ呼び止められる。
『でもっ...成長、しなきゃ...』
「そう焦るな、まだ話は終わっていないぞ」