第20章 本音
零の車が突き当たりを曲がるまで見届けると、哀ちゃんが外に出てきた
「あら」
『哀ちゃん...』
また見られてしまったかもしれない...
「元気ね」
『えっ...と...』
「何よ 別に何も見てないわよ」
両腕を組んでジト目で視線を逸らす哀ちゃんの姿からは、見られたのはほぼ確実という事を伺える...
「おーみなみ君」
『こんにちは』
続いて阿笠博士も外に出てきて、どうやら買い物に行くみたい
「どうしたんじゃ哀君」
「別に 何も無いわよ」
状況を分かっていない博士は哀ちゃんに言われるがまま買い物へと行ってしまった。
工藤邸に戻り、鍵を開けて中に入ると零の言っていた通り赤井さんはまだ帰ってきてなかった。
一人になると考える事が増える。
赤井さんとちゃんと話さないとだなあ...
でも、赤井さんは怒っているのか、呆れてものも言えない状態にさせてしまったのか、それとも...もう私への感情が消えてしまったのかな
向き合わなければいけない事は分かってる。
だけどもし本当に自分の悪い予想が的中していたとしたら、その答え合わせが怖くて。
予想の候補は全て悪い方向しか無い。
こんな事にしてしまった自分に腹が立つ
零はそれを知った上であの時、そう言ったのかな。
赤井さんと話さなければいけないのはこれだけでは無い
ヒロさんの事...
聞いて良いわけ無いに決まってるけど、でも赤井さんと付き合ってるんだし
それに赤井さんがそんな事をする人では無いって事を確かめたい。
赤井さんの事、昔はあんなに大好きだったのにこうしてこの世界にやってきて自分はなんて最低な事をしているんだと我に返る。
勿論今だって言葉で上手く表せないぐらい大好きなのは確かで。
でも、でも...零との今までを話すなんて事はしないけど、色々話したら終わってしまうのではないかって不安になってしまって。
これらの感情は全て自分の起こした事への罰だし、まだこの程度なら可愛いものなのだろう。
全てがグチャグチャに絡み合っていて、気付けば視界は歪んでボヤけて
暖かい滴が頬を伝って流れていった。