第20章 本音
みなみさんを諦めた訳では無い。
だが僕が話している事は事実だ、みなみさんを悲しませたくはない
赤井も既に勘づいている事だろうから。
みなみさんは恐らく、僕の言いたい事とは逆に捉えているだろうけど...
それにみなみさんを赤井に譲った訳でも無い
あくまでもみなみさんを尊重したまでだ。
僕達の関係は...
都合のいい関係と捉えられても仕方がない事だろう。
それでも僕はそんな風にみなみさんを思った事は一度も、一ミリも無い
『うん...分かった』
「本当か?」
『う、ん... あのさ... 私達って その、えっと...』
上手く言葉に出せない
頭の中には浮かんでいるのに、言語化しようとすると何だか恥ずかしくもあった
「ん?」
『その...都合の良い関係って事?』
やっぱり みなみさんの考えている事はよく分かってしまう
「僕はそんな風に思った事は一度も無い。でもみなみさんにそう思わせてしまってるならごめん」
そもそもこんな質問は私の立場でする事じゃなかった
寧ろ逆な気がするし...
零の言葉に嘘の二文字が無い事は直ぐにハッキリと分かった。
それはきっと零だからなのだろう。
こうして話していき、自分の中に浮かんだざわつきは少し消えてくれたみたい。
それでも少し、心にぽっかりと穴が空いたような感覚なのは何故だろう...
だけど、終わりではないという事に安堵して 零の顔を見れば自然に笑みが溢れて。
「良かった みなみさんの笑顔が見れて」
『私もだよ 零』
少しずつ顔が近付いていくと、“タイミング良く”零の携帯が鳴り出した。
「はあ 全く。 ちょっとごめん」
『うん』
やれやれといった感じで、腰を上げ少し離れた所で通話を始める零。
相手は...誰だろう
零の表情と、口調的に風見さんかな?
「ああ。分かった、すぐに向かう それまで任せたぞ、風見」
やっぱり。
警察としての零の姿は凄くかっこいい。
さっきまでの姿とは打って変わって、今は上司になっていて。
「みなみさん、ごめん。公安の方で急用が出来たんだ」