第20章 本音
みなみの様子がどこかおかしいのは気の所為では無いだろう。
そりゃあんな場所に誘拐されればこうなってもおかしくは無い。
時間が経ってから大きなショックを受けることも少なくは無いからな
どう解してやるべきか
自分の愛する女一人も守れなかった事に関しては今も自分を責めてしまう
今の俺では素顔でこいつと外に出る事も出来ない。今日は別だったが。
みなみはそんな俺とこの先も一緒に居たいと思えるのか。
安室君と共に出てきた所も見えたが、どうやらこの二人は…
それは前々から薄々勘づいてはいたが。
今回の件は安室君に感謝しているが、だからと言ってみなみを奪って良い訳でも無いぞ。
こいつはどう思っているんだ?
だが今の俺にはそんな事を責める資格も無い様に感じる。
『赤井さん』
やっぱり恐らく数日ぶりの赤井さんは何処か様子がいつもと違くて。
もし私に対して罪悪感の様な物を感じているならそんな物必要無いと伝えたくて。
寧ろそう思うべきなのは私なのに…
「どうした」
『あの、本当に…もうそんな風に思わないでください』
「だが」
『そもそも赤井さんは最初止めてた訳だし、決めたのは私自身であって向こうでの楽しい思い出も出来たんですよ!まあ、確かにその後は大変だったけど…結果今こうして赤井さんの傍に居れるし…』
「みなみ…」
『うん』
「お前は俺で良いのか?」
まさか赤井さんからそんな言葉が出てくるとは思っていなかった。
逆にそれは私が聞く方な筈なのに…
『赤井さんじゃないと嫌です…だからそんな風に思わないで…?』
零との事が無かったかの様にスラスラと出てくる言葉は勿論本心である。
今は目の前に居る赤井さんの事だけを…
目が合えば顎を掴まれ、ゆっくりと唇が重なる
何時ぶりだろう…
口の中に広がる煙草の香りや味も感触もどれも愛おしくて。
「みなみ、お前がそう言うならこれからも一緒に居てくれ」
『はい!喜んで!』
漸く口の端が上がった赤井さんに心から安心をした。
「腹は?」
『そういえば何も食べてないです…』
「公安は案外気が利かないんだな」
『いや!それは…私が忘れてただけです…』
「ホォ…やけに熱心だな」
『気の所為です!』
また何時もの様に戻れた事が何よりも嬉しかった