第20章 本音
久々に触れた赤井さんの手は優しいけど、どこか強い力も篭っている
だけど痛くなくて。
「みなみさんが危険な目にあったのはお前のせいでもあるんだぞ」
「ああ。それはよく分かっているさ、みなみには悪かったと思っている」
「!お前は毎回そうやって……!ヒロの時もそうだ」
『ヒロ…?』
「…今のは忘れてくれ みなみさん」
零の目の色が変わって、突然怒り出す零に少し恐怖を感じた。
ヒロって誰なの?
この二人の仲が異様に悪いのは分かっていたけど、自分が思うよりもっと深い何かがあるのだろう。
だけど、聞くことも出来ず。
「呉々も気をつけろよ、赤井」
「ああ、言われなくとも」
「みなみさんも」
『は、はい…』
そう言って零は疑問だけを残し、先に車に乗って去っていった。
「みなみ、遅くなってすまない」
『…全然…ありがとうございます』
二人きりになるとさっきとは違って赤井さんの声は優しくて。
車のある場所まで歩き出す
「みなみには“こいつ”もある事を話していなかったな」
赤井さんの言う“こいつ”とはこのかっこいい車の事。
車に詳しくはないけど外車という事だけは流石に分かるし高そう…
どうやらマスタングという名前らしくて、初めて乗る車内は沖矢昴の方の車とは違ってもっとゆったりしていて、乗り心地も凄く良い
エンジンをかけると、また手を繋いでくれる赤井さん。
車に気を取られていたけど、一体今さっきの出来事をどこからどう話したら良いかが分からない。
赤井さんの性格はある程度分かっているつもりだけど、やっぱり直ぐには何かを問いつめてこない辺りがこういう時は怖い
地上に出るまで螺旋状の立体駐車場をグルグルと走っている時に
隣を見ると前を向いて片手でハンドルを握る姿がとてもかっこよくて。
こんな時に思う事では無いのは分かっているけど、久々に見る赤井さんはやっぱりかっこよくて、冷静で落ち着いてて、そしてどこまでも安心感が得られる。